XSENSモーションキャプチャーシステムを使用してみて



はじめまして!
株式会社アドグローブ ゲーム事業部のデザイナー飯塚です。

今回は弊社で導入したモーションキャプチャーシステム
【XSENS MVN Link】についての記事となります。

詳細な機能などは公式ページやXsensの公式Youtubeチャンネルで解説されていますので、ここでは簡単な概要説明のあと、ゲーム制作の現場で使用してみての感想やメリットなどを中心に書かせていただこうと思います!

 

【XSENS MVN Link】について

【XSENS MVN Link】はXsens社の提供するモーションキャプチャーシステムです。

慣性センサー式を採用しており、撮影時の磁場の影響やモデルの体格の違い、ポスト処理などを専用のソフトウェアで行うことで他のセンサー式システムよりも高精度なキャプチャを可能にしています。

Xsens社の提供する製品の中でも本格的な3Dキャラクターアニメーションのキャプチャをターゲットとしたシステムです。

 

機材

【XSENS MVN Link】の機材はすべて専用のスーツケース1つに収納が可能です。

弊社では別売りのフィンガートラッキング用グローブ【Xsens Gloves by MANUS】も使用していますが、こちらは専用のケースへの収納となります。
必要な機材をスーツケース1つで持ち運べるので、貸しスタジオなどへの移動の負担が非常に少ないのが助かります!

キャスターや伸縮可能な持ち手がついた専用収納ケース

【MVN Link】のキャプチャスーツ着用時の見た目は以下の写真をご覧ください。

【MVN Link】着用時の見た目と【Xsens Gloves by MANUS】

スーツ全体が2層構造になっていて、スーツの内側にセンサーである「トラッカー」を付けています。
背中の腰付近にはバッテリーとボディパックを装備しています。
ボディパックにはスーツとPCを通信接続する機能のほか、内蔵メモリーに最大15時間分のキャプチャデータを保存しておくことができます。

これにより後述する「スペースの制限がないキャプチャ」が可能となっています!
スーツは「トラッカー」を付けてから着用するようにすれば1人で着ることが可能です。

 

メリット

自社で【XSENS MVN Link】を導入して感じたメリットとしては、大きく以下の3つが挙げられます!

1.撮影スペースに制限がない

外部のカメラやセンサーによってキャプチャデータを直接PCに取り込むタイプのシステムと違い、【XSENS MVN Link】では腰に装着した「ボディパック」にキャプチャデータを一時保存しておくことが可能です。(直接PCに送ることも可能です)

そのため、キャリブレーションが終わった後はどこででも撮影が可能になります!

例えば…

 ●外の広いスペースで走りモーションを撮影

 ●オフィスの階段で上り下りのモーションを撮影

 ●公園の遊具などを使って壁を登るモーションも撮影できるかも…?

オフィスでは用意できる撮影スペースや小物に限りがあるので、どこででも撮影できる【XSENS MVN Link】のシステムは自社導入に非常に適していると感じました!

 

2.撮影を1人で行うことが可能

 ●機材のセッティング

 ●スーツの着用

 ●キャリブレーション

 ●キャプチャ撮影

 ●エクスポート

【MVN Link】ではこれらの作業を作業者1人で行えます!

特にプロト開発段階でプロジェクトメンバーの少ない時などに、モーショナーが1人でキャプチャを行えることは大きなメリットだと感じました。

 

3.キャプチャデータのリアルタイム確認が可能

スタジオに依頼してのモーション撮影の場合、データが納品されないと「実際のキャラモデルでの見映え確認」ができないということも多いかと思います。

Xsensのモーションキャプチャシステムで撮影したモーションデータは、専用のソフトウェア/アドオンを使用することでMAYAやMotionBuilderなどのDCCツールや、UE4などのゲームエンジンにリアルタイムでモーションを送ることができます。

実際に使用するキャラモデルでの動きを確認しながら撮影を進められるので、撮影後の調整作業の軽減に役立つだけでなく、モーションイメージを固めるのにも非常に有用だと感じました。

これは試作段階だけでなく本番撮影の際にも役立つ機能だと思います。

 

まとめ

今回自社で【XSENS MVN Link】を導入してみての所感をまとめさせていただきます

 ●モーションキャプチャを気軽に行えるようになったことで、開発初期の試行錯誤を効率よく、短時間で行えるようになった

 ●撮影場所を選ばない柔軟なキャプチャシステムによって、制作できるモーションの幅が広がり、アイデアを形にすることが容易になった

モーションキャプチャシステムの自社導入のメリットとして、モーション試作のコストを抑えることは非常に大きいと思います。

プロト段階で次々と出てくるアイデアを、モーションリソースの用意が間に合わずなかなか形にできない…、しかし試作段階の無くなるかもしれない仕様のために高額なスタジオ撮影は行えない。

そういった状況を解決し、より柔軟に、より手軽に高品質なモーションキャプチャーを行える【XSENS MVN Link】は、今後の制作に非常に有用だと感じています!


まだまだ弊社でもこのシステムを完全に使いこなせているわけではないので、
今後もより良い活用法を模索していければと考えています!