Live2D cubismで作る!前方に動く腕の作り方

こんにちは、株式会社アドグローブ 2DデザイナーのHARUです。

普段は2Dイラスト素材の制作と、アートディレクション業務、外注管理などを行っていますが、過去にはLive2Dモーション制作の実務経験があります。
近年、モーション制作ツールとして急速に人気が出てきたLive2Dですが、クリエイターによって作り方や効率化の方法は様々であり、作り手の数だけ手法があるといっても過言ではないでしょう。

今回は、キャラクターLive2Dモデルのモーションをより自然に作る方法の1つとして個人製作したものと手法をご紹介いたします。

■目標
複雑な素材は用意せず、最低限のパーツ数で、構造的に自然なモーションを作る!

Live2Dモデル制作を実務レベルで行うときに大切な事として、今回は「汎用性の高さ」「簡単な構造」「見栄えの良さ」を目標とします。
大量の素材を作る必要のある現場では、速さとクオリティは同等に重要視されます。

これらのポイントを踏まえた構造で、以下のようにモーションを制作してみました。


■自然に腕が動くモーション!


いかがでしょうか?
腕を上げるときの仕草に、システム的なパーツ切り替えや、平面的な腕の回転が無く、自然さを感じていただけると思います。

このモーション構造をとることで、以下のようなメリットが考えられます。

・人体の構造に則った自然なモーションを演出できる
・奥行きのあるリッチな仕上がりになる ・パーツ作画コストを抑えられる

キャラクターを長時間眺めるようなシナリオの会話シーンでは、
没入感を損なわないゲーム体験に繋がります。
必要なパーツ数を極限まで抑えているため、季節イベントでの着せ替えや、大人数の対応など、
大量の作画が必要な場面に向いています。

それでは、実際の構造について次項より解説してまいります。


■作り方、構造について


構造は至ってシンプルです。

・下げた腕 (腕)
・上げた腕 (腕 反転)

基本的にこの2種類で完結します。
それぞれ「袖口 (表裏)」「袖 (上下)」など必要に応じて細分化します。

それでは、ここに伸縮パラメータ+表示切替えを用意していきましょう。

【1】伸縮パラメータの作成


伸縮パラメータはワープデフォーマを使用し、アートメッシュの真上の階層に作成します。
腕を上げた時の立体感を意識して、円形の回り込みをできるだけきれいに作ります。


表示切替のために、1フレームで表示・非表示を行うパラメータを作成します。

【TIPS】

・手を差し伸べるような、途中で止まるモーションがあるなら、円形の精度が最重要事項です。袖口のメッシュやワープのマス目は小さく高精度に。
・下げた腕、上げた腕それぞれが縮み切った状態の間隔は、モーション内容に応じて調整します。

【2】回転デフォーマの作成

顎に手を当てたり、腕を組むような仕草に対応するためには、回転デフォーマが必要です。
同時に、表示・非表示のパラメータを作成します。
表示パラメータはフェードさせず、1フレームで切り替わるよう作成します。

今回は特殊な構造は無く、画像のような階層にしました。

【3】動き、はみ出しのチェック

様々な角度を取らせて、破綻が無いか確認します。
特に斜め方向になった時の円形がきれいに見えると、クオリティアップにつながります。

SKDモデル想定なので、ワープデフォーマからアートメッシュの頂点がはみ出していないかチェックし、丁寧に整えます。

【4】アニメーションを作る


今回の解説ではモデルの構造についてが主題のため、モーションの細かい解説はまた別の機会で出来ればと思います。

この構造の弱点として、「上げ」「下げ」のパーツ間隔が広いので、ゆっくりと上下させずに、フレームレートはやや遅めかつ、勢いやスピードのある動きの方が向いています。
いかにも変形している様子が露骨に見えないよう、それを踏まえてアニメーションさせると良いです。



完成!
腕を上げている様子を、少ないパーツ数で自然に表現できました。


■まとめ

今回はゲームでの使用を想定したLive2Dモデルおよびモーションを作るにあたり、簡単な構造で自然さを追求した腕パーツの制作方法を紹介しました。

私自身の経験として、画面越しのキャラクターと日々交流をする中で、どんなにビジュアルや会話に魅了されていても、腕が画面外から回転して割り込んでくるたびに「ああLive2Dモデルだなぁ…」と一瞬目が覚めてしまう事が毎日のようにあります。
これを解消し、画面の向こうの彼・彼女により実在感を持たせて、より愛してもらえるようになんとかしたいと考えて研究してみました。

しかし、Live2Dモーションっぽくなってしまう回転腕にも様々なメリットや得意なことがあるはずです。
低コストでチュートリアルレベルで誰でもすぐに作れることはラーニングコストを考えると大きなメリットです。
パーツ切り替え時の違和感を無視できるなら、シワや立体感、絶妙な角度表現は絵の力でカバーできます。

それらを加味したうえで、モデルに「自然さ」を与え、演出することは、それを超えるメリットがあると考えています。

Live2Dは比較的操作が簡単なツールであり、コミュニティによる知識がとても豊富です。さらに直近のアップデートでは、自動生成機能がとても充実してまいりました。イラストレーターの方々が、ハードルを感じずに、Live2Dの世界に飛び込んでほしいと願っています。


最後までご覧になっていただきありがとうございました。
あなたの絵が、より生き生きと、魅力的で愛されるものになりますように!

▼ 使用ツール www.live2d.com

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