企画書へのアプローチ

企画書。
ゲームのプランナーにとって、避けては通れない書類。
プランナーを目指す人、なった人なら、一度は見たり書いたりしたことがあるんじゃないでしょうか。

でも、この企画書、一体どういった資料なのでしょうか?
はっきりと答えられる人って意外といないんじゃないでしょうか。
就活で「企画書を提出して」とか言われても、どんなものを書けばいいのか途方にくれることもあるのでは。

実は私もその一人。
一応20年以上ゲームの企画職で飯を食ってきましたが、全ての人が納得できる答えを言える自信はありません。

とはいえ、実際に企画書が必要な時に、よくわからない、と言うわけにもいきません。
これまでいろんなことを思ったり考えたりしながら企画書に取り組んできました。
ここでは、そういった企画書へのアプローチを記してみました。

企画書の目的

アドグローブ ディレクターの堀川です。
ゲーム事業部でのプランナー・ディレクション業務を担当しています。

そもそも企画書って、なんのために書くのでしょう?

ゲームの企画書の内容としては、ざっくり書くと

  • どんなゲームなのかを伝えるもの
  • なぜ作るのか、どうして採算があうのかという商品性を伝えるもの

といったものが多いでしょうが、これらが書かれていればいいのでしょうか?

私は違うと思っています。
上に挙げた内容は、目的を達成するための手段であり、目的そのものではありません。

だってそうでしょう?
どんなゲームかが伝わる=商品としてのゲーム開発が始まる、なのでしょうか?
就活の課題であれば、どんなゲームであるかが伝われば、採用されるのでしょうか?
そんなことはないですよね。

では目的は何か?

私は読み手の心を動かすことだと思っています。

ゲーム開発を開始するための企画書なら、出資者にお金を出しても開発したいと思ってもらう。
ゲーム会社へ就職するための企画書なら、入りたい会社に採用したいと思ってもらう。
どちらも読み手の心を動かしていますよね。
それが企画書を作る目的ではないでしょうか。

これが、ざっくりとした全容や機能を伝える「概要書」や、
詳細な仕様を記載する「仕様書」だと違います。
読み手に内容が意図通り正しく伝わればOK。相手がどう思おうが関係ありません。

ですが「企画書」は意図通りに伝わったとしても、その先につながらなければ意味がありません。
そこが企画書と他の書類との大きな違いになると私は考えています。

作成時に留意すること

この目的をふまえた上で、実際に企画書を作成するときに考えていることを書いてみます。

なぜ最初に目的をふまえるかというと、それが大前提になるからです。

いくら立派なものを作ったとしても目的を達成できなければ、「企画書」としては価値が低いものになってしまいます。

これは他のものでも同じで、何のために作るのか、何を実現したいのか、を常に頭の片隅に置き続けることは、製作物がブレないために大切なことだと思います。

基本フォーマットはない

私は、自分の部下に企画書のフォーマットを渡したことがありません。
聞かれても、自分で考えるように伝えます。

それは、私が企画書にフォーマットはないと考えているからです。

企画したゲームで何を見せたいのかは人それぞれ。
見せたい内容によって書き方も書く順も当然違ってくるはずです。

とはいえ

  • 社内コンペで審査するのに、内容を見比べやすくする
  • 時間がない中で、企画書の数をそろえなければならない

といった必要性に迫られれば書式を統一することに意味があるとは思います。

でも、その企画書単独(または数部)でゲームや自分を売り込むなら、
少しでもよく見せる、分かってもらうために企画書の構成や形から工夫すべきでしょう。

就活で、明らかに専門学校で教えられた書式に則った企画書だけで応募する人も見かけますが、
わざわざ枠にはまった考え方しかしていない自分を見せる必要はないんじゃないでしょうか。

読んでほしい順番にページを重ねる

企画書は、読み手にとって必ずしも読む必要がない、また、読んだとしても最後まで読むかは分からない場合が多いです。
語弊を恐れずに言えば読み手は企画書に興味を持つ義理はないことが多いのです。

なので、ページ構成は読んでほしい内容、知ってほしい情報の順番に並べるのが良いと思います。
理由は、どのページまで読んだ場合でも、ページ数なりに伝えたいことを伝えるためです。

私は

  • ゲームをあらわすコンセプトのイラスト(画像)
  • タイトル
  • 製品の最低情報(ジャンル、ターゲット、プラットフォーム、開発期間or発売時期(両方の場合もあり))

で表紙を作ることが多いです

それは、表紙(最初のページ)だけしか見なくても、作りたいゲームをなんとなく想像してもらえるんじゃないか、興味をひけるんじゃないかと期待するからです。

もちろんこれが正解ではありません。
より伝えたい内容があるなら、それを最初のページにすべきです。

私自身も、もっと改良していきたいと考えています。

文章を書きすぎない

作りたいゲームへの思いが強ければ強いほど、それを伝えたいがために、ついあれこれ書いてしまいがちになります。

でもそれは読み手に「読む」という労力を強いることにもつながりかねません。
また、文章が大量にあると、一つ一つへの印象を薄れさせる結果にもなります。

書くことがないから文章が少ない時はスカスカに感じられてしまいますが、推敲した末のものなら案外そうならないものです。
(逆に更に言いたいことが文間に滲み出てきて、深みのある資料に感じられたりします)

大切なのは、面倒くさがらずに書く文章を吟味して、必要なことに絞って記述するという手間をかけることだと思います。

読み手の興味をひきそうなものを書く(または用意する)

先にも書きましたが、読み手は企画書に興味を持つ義理はない場合が多いです。

なので、読み手に興味を持ってもらえる内容を用意することは、とても大切なことだと考えています。

読み手にとって興味のあるものは何でしょうか?
ゲームの収益? 作るゲームのジャンル? 何か新しいことがはじまるんじゃないかというワクワク感?

読み手を知っているならその人自身を、知らないなら読むであろう人を想像して、その人が興味を持ちそうな内容を盛り込めば、企画書の魅力は増していきます。

「自分はゲームの内容だけで勝負する! 読む人がどうであろうと関係ない!!」
こういう考え方も、間違っているとは言えません。

ですが、私なら企画書の目的「読み手の心を動かすこと」のために、出来る限りの手段をとりたいです。
それが企画を商品化する近道となるわけですから。

なら、読み手の興味をひきそうなことを用意するのは決して間違っていることではないと思っています。
相手も人です。絶対公正の神様ではありません。興味のある話をされた方がポジティブな方向に心が動くのは当然のことではないでしょうか。

ジャンルフリーなら自分の得意なジャンルで勝負する

ジャンルがフリーなら、自分の得意ジャンルで勝負したほうがいいと思われます。
もしはじめて企画書を読んでもらう場合なら尚更です。

理由は、自分が得意なジャンルは「語れる」からです。
企画書で興味を持ってもらえた時、出資者や採用者は、書き手にいろんなことを尋ねたくなります。
それは、つきつめれば、あなたがどこまで考えているか、どこまで本気なのかを知りたいからです。

そのときに、企画書以上のことを語れなければ、企画書以上のことは考えてないんだな、と思われてしまいます。
逆にいろんなことを語れれば、企画書にはこれだけしか書いてないけど、もっと奥深いものがありそう、と可能性を感じてもらえます。

この可能性を感じてもらう事が、目的となる「心を動かす」に直結していきます。

また、この点は実際にゲームを作る段階になってからも大きく影響します。
いざ製作がはじまると、企画書の内容にどんどん肉付けして、足りないところを補っていかねばなりません。

そんな時、得意ジャンルであれば、知っていることが多いので、アイデアの引き出しが数多くあります。
また、困った時にも、元々の味を薄めないようにしながらの応用が効きやすく解決の可能性が高まります。

終わりに

とまあ、こんな感じのことを考えながら企画書を書いてきました。
漠然とした内容&あくまで私個人の考え方にはなりますが、
これから企画書を書こうとしている人にとって、少しでも参考になればうれしいです。